2017/11/08
加齢とともにゆっくり進行する難聴…認知症とも関係
職場の健康診断で行われる聴力検査は「選別聴力検査」というもので、自覚しにくい難聴のスクリーニング(拾い上げ)を目的としている。「オージオメーター」という機器とヘッドホンを用いて、低い周波数の1kHzの音と高い周波数の4kHzの音を聞き、聞こえたタイミングで正確に応答ボタンを押すことができれば、特に問題のない「所見なし」とされる。選別聴力検査はもともと、常に騒音にさらされている職場での聴覚管理を第一の目的として、定期的な実施が義務付けられたものです。そのため、騒音性難聴の初期で聞こえにくくなるといわれる4kHzの音が設定されています。一方、加齢に伴って起こる加齢性難聴は、8kHz以上の高音域から聞こえにくくなるため、ごく初期では職場健診で見つけるのは難しい。難聴の原因には耳垢がつまる耳垢栓塞(じこうせんそく)、鼓膜炎、急性・慢性中耳炎、滲出性(しんしゅつせい)中耳炎、騒音性難聴、加齢性難聴のほか、突発性難聴、メニエール病、聴神経腫瘍などが挙げられます。
ただ、職場健診で見つかることが多いのは、医療機関を受診するような自覚症状がほとんどなく、ゆっくりと進行する難聴です。先述した騒音性難聴、加齢性難聴もこれに当たります。加齢性難聴には、主に3つの特徴があります。1つは、音は聞こえても、言葉が明瞭に聞き取れないこと。例えば、テレビの音は聞こえても、会話が聞き取りにくいため、ボリュームを大きくしていることを、家族などから指摘されるケースがあります。2つめは、高血圧や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病があると聞こえが悪化しやすい。3つめは、難聴のなりやすさには個人差があり、遺伝的な要素が関係する。
65歳以上の難聴人口は約1500万人と推計されている。難聴があると認知機能の衰えが進むことが分かってきました。難聴を引き起こすすべてのメカニズムはまだ解明されていません。しかし、難聴の危険因子として最も大きな原因と考えられているのが、騒音です。10代や20代の頃に、大きな音量で音楽などを日常的に聞いていると、60歳を過ぎてから加齢性難聴になるリスクは非常に高くなります。また、大音量に長時間さらされると40歳くらいで難聴が起こることもあります。怖いのは、聴力機能は一度壊れたら元には戻らないということです。スマートフォンの音楽を長時間イヤホンで音楽を聴く習慣のある方は要注意です。今後このような方が増加することが危惧されます。一方、補聴器を使って聴力を補えば認知機能が改善するかどうかは不明です。一方、家族のサポートで補聴器を使うことにより、コミュニケーションが取りやすくなり、認知症に伴う周辺症状が改善される場合もあります。
原因不明の体の痛み…線維筋痛症
米国の人気歌手、レディー・ガガさんが活動休止を発表し、「線維筋痛症と闘病中だ」と明かしました。線維筋痛症とは、全身の激しい痛みが特徴的な病気です。痛みは急に発症し、慢性化する。患者の痛みの訴えは「筋肉がひきつれるような」「骨が裂けるような」「全身をガラスの破片が巡っているような」などと表現され、重症な場合には、「痛みで失神してしまう」「布団が背中に当たるのが痛くて、1年も横になって眠れていない」「ものを飲み込むと喉が痛くて食事がとれない」といったケースもあるそうだ。骨格筋だけでなく、内臓なども含めて、深いレベルまで全身の筋肉がけいれんのようにひきつれるため、胃腸障害や月経困難症、排尿障害、血流不全など全身に不調をきたします。痛み以外にも、慢性的な疲労感、眠れない、しびれ、こわばり、口の渇き、頭痛、光がまぶしいなど多彩な症状が見られ、うつ病、強迫性障害など精神疾患の合併もあります。線維筋痛症の原因はまだはっきりとは解明されていないが、脳の痛みを感じるシステムに何らかの異常があるのではないかと考えられています。この疾患の発症には、最初の段階として、何らかの身体的外傷(手術、事故などの外傷、オーバーワークによる肉体的負荷など)や心的外傷(虐待やショックな体験によるトラウマなど)を負っていること。2つ目の段階が、過去の外傷からある程度経過した後に、新たな外傷やストレスが加わること。自分の体に負荷をかけ続ける行動パターンになりやすい「過剰な几帳面さ」「強迫性」「完璧性」といった気質の方が多いとされています。逆に言うとこの病気は活動性の低い人には起こりません。患者には共通して、厳しい世界で完全性を求めたり、運動などでも徹底的に鍛えるといった、完璧主義で活動性が高い一面があります。これらのことを念頭に一般的な鎮痛薬が効かない、といったことがあったら、早めに受診してください。診療科はリウマチ専門医がよいかと思います。