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2019年6月

加熱式たばこ(電子タバコ)によって禁煙できなくなる憂慮

 

  世界禁煙デーが5月31日と制定されてから、現在まで27年が経過しました。日本では制定の3年後から、5月31日から6月6日までの1週間を禁煙週間としています。ただ、このことを知っている人はほとんどいません。日本ではもうすぐ東京オリンピックが開催されます。先進国ほど禁煙の取り組みが進んでいますので、日本も遅れをとったままでいることなく、受動喫煙問題に取り組んでいるところです。

  加熱式たばこ(電子タバコ)とは主にたばこ葉にしみ込ませたグリセリンなどが加熱によってニコチンなどを含む蒸気になる仕組みです。火を使わないので煙は出ず、灰も発生しません。現在、フィリップモリスのiQOS(アイコス)、ブリティッシュ・アメリカン・タバコのglo(グロー)、JTのPloom TECH(プルーム・テック)、の3種類が主製品になります。iQOSとgloはたばこ葉の入ったたばこ状スティックを直接加熱して、Ploom TECHはカートリッジを加熱して発生した蒸気をたばこ葉が入った小さい専用カプセルに通すことで、吸う蒸気にはニコチンが含まれる仕組みです。新型たばこはIQOS(アイコス)が発売されたのを皮切りに、利用者を急速に増やしています。今やその利用者は200万人以上とされ、国内に約2000万人いる喫煙者の1割以上が使用しているといわれています。

  医師が禁煙指導をした際に「新型たばこなら吸ってもよいか?」と問われる場合があります。新型たばこはより効果的な禁煙方法から喫煙者を遠ざけ、結果的に禁煙を阻害する可能性があります。禁煙行動に取り組んだ禁煙施行者を対象に、禁煙成功率を比較。新型たばこの使用と禁煙成功率との関係を調べたところ、新型たばこ使用群では禁煙成功率が低いというデータがあります。患者が禁煙できないのはニコチン依存症のためです。それを解消するにはニコチン代替療法やニコチン受容体部分作動薬といった薬物療法を用いてニコチンに対する離脱症状を緩和する必要があります。新型たばこでは、既存の紙巻きたばことほぼ同量のニコチンを摂取することになり、かつニコチンの血中濃度の変動も紙巻きたばこと同様に大きい。そのため、「禁煙補助薬の代わりになるものではない」

  加熱式たばこは火、煙、灰がなく、臭いも少なく、「有害物質を約90%低減」をアピールしています。報告では主流煙中のタールは約半分、一酸化炭素は100分の1程度になっていますが、ニコチン量は通常の紙巻きタバコ煙とほぼ同程度で変わりません。発癌性を持つニトロソアミン類は約15分の1残っており、有害性はなくなったわけではありません。喫煙により日々繰り返される有毒ガスの曝露の積み重ねの中で、これらの1本当たりの有毒物質の減少したからと言って発癌リスクが減るという証明はされていません。ニコチン含有量がほとんど変わらない加熱式たばこは、ニコチン依存を軽減するどころか、ニコチン中毒状態を維持するために有害物質の供給法を変えたにすぎないのです。そればかりか、ニコチン依存性が増し、ニコチン禁断症状が出現しやすくなり、使用本数が増加する可能性も示されています。最近の米国の研究においても、電子たばこ使用者は紙巻きたばこのみの喫煙者と比べ、ニコチン依存度がより高く、喫煙量の増加がみられ、体内コチニン濃度がより高くなり、電子たばこ使用者の群ではCOPDが増悪した患者の割合がより高い結果が出ています。紙巻きたばこから電子たばこへの移行は、禁煙のプロセスになるどころか、ニコチン中毒状態をより悪化させ、健康被害が増大する危険性をはらんでいるのです。