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2023年3月

かかるとやっかいな大人の喘息

 たまに出るくらいなら見過ごされがちな「咳」。
だが、風邪の後に長引く咳を放っておくことで喘息につながることがある。

 喘息は呼吸器疾患の中でも慢性化し、生活の質を著しく落としかねないやっかいな疾患です。気道が慢性的な炎症により狭くなり、そこに何かしらの刺激が加わると激しい咳と息苦しさをともなう発作が起こる。激しい発作が長く続くと呼吸困難になり命に関わることもあります。小児喘息は、成長に従い免疫系が変化することで放っておいても6~8割の人で徐々に症状が出なくなる。ところが大人になってからの成人喘息は放置していると重症化し、難治性になる恐れがあります。この成人喘息の7割は、大人になって初めて発症する人だという。

 喘息の原因はさまざまあるが、特定のアレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質)に反応して起こる「アトピー型」と、アレルゲンが特定できない「非アトピー型」に大別される。昭和大学病院の相良博典病院長によれば成人喘息は6:4でアトピー型が多いという。  代表的なアレルゲンはダニやハウスダスト。特にダニは、気密性が高い現代の住宅環境では季節に関わらず活動しやすい上、死骸もアレルゲンになります。また、過剰なストレスや疲労は抵抗力を落とし、発症リスクになります。女性の場合は特に中年期以降の肥満が喘息発症リスクを高めます。
•アトピー型喘息
  ダニやカビ、ペットの毛など特定のアレルゲンに対する免疫反応(アレルギー)により
  発作が起こるタイプの喘息。環境整備をするなどアレルゲンを遠ざけることが発作予防に。
•非アトピー型喘息
  アレルゲンが特定できない喘息。気候の変化や疲労、ストレス、タバコの煙などが誘因になり発作が起こる。これらをできるだけ避けることが予防になる。

薬剤が原因の喘息も

 成人の約1割を占め20~50代女性に発症しやすいとされるのが、アスピリンを代表とする解熱剤や鎮痛剤で誘発されるアスピリン喘息です。意識障害に至るほどの重症例も多い。内服薬だけでなく坐薬や湿布でも起こるのでアスピリン喘息患者には禁忌となる。この中には重症の副鼻腔炎を合併している好酸球性副鼻腔炎という疾患もあります。

喘息の典型的な自覚症状は呼吸時にヒューヒュー、ぜいぜいという喘鳴(ぜいめい)。炎症により気道が腫れて狭くなっているため空気が通ると音がする。軽症では気づかないこともあります。咽頭痛で受診されて実は喘息の咳でのどが痛くなった方も多くみられます。成人喘息の6割程度は軽症間欠型といって、たまにしか発作が起こらず、症状も軽微だが放置していると悪化する恐れがあります。
 発症を予防するにはまず刺激となりそうなアレルゲンを避け、ストレスや疲れをためないようにすること。また、咳喘息の約3割は喘息に移行するといわれ、花粉症も放置すると発症リスクになります。
 喘息は適切な治療を受ければ喘息がない人と変わらない生活を送ることができる。そのため、薬を上手に使ってずっと症状が出ない状態にすることが喘息の治療目標になる。
 妊娠出産や閉経前後に起こるホルモンの急変動が喘息の原因となる気道炎症の引き金や悪化になることがわかっています。妊娠中に喘息を発症するケースも多く、そういった場合は妊娠中でもステロイド剤の吸入が第一選択になります。

 早期から治療開始すればほとんどの場合2カ月程度で症状がおさまってきます。状態がよくなってくれば薬の量を減らすこともできます。ただし、量は減っても薬を使い続ける必要はあります。

スリープテック

 睡眠の注目が高まっている。睡眠に関するリテラシーが高まり、睡眠の重要性が広く認知されてきた。企業経営でも、生産性を上げようとすれば社員の健康が犠牲になるので、いかに社員の健康を守りながら生産性を上げるかが問題とされていた。それがここに来て「社員の健康を守ることこそが、特に睡眠をきちんと取ることが生産性の向上にもつながる」という事実が広く知られるようになってきました。

 正確に睡眠状態を調べる方法として、専門の医療機関で行うポリソムノグラフィ(PSG)検査がある。睡眠中の脳波や筋電図、眼電図、心電図、鼻からの気流などを調べるために多くのセンサーを体に取り付け、1晩入院して行う検査です。
 入院しなくても簡易検査として脳波や筋電図は取れませんが睡眠状態を調べるものもあります。そのほかにアップルやフィットビット・ジャパンなどが出している時計型スマートウォッチがあり、手首に着けたまま眠ると、内蔵した加速度センサーや心拍センサーを使って、睡眠時間や睡眠の深さを推定することができます。指輪タイプやパジャマにセンサーがついていて、スマホにデータを送るタイプもあります。
 さらに枕元にスマホを置いておくと、加速度センサーでベッドの振動から呼吸状態を見て、就寝時刻や起床時刻を推測するアプリもあります。

 これらのスリープテックは、基本的に体の動きから睡眠状態を推測しています。脳波の測定とは異なり、睡眠の質をきちんと推定するには限界がありますが、就寝や起床の時刻はある程度正確に検知します。スマホアプリやスマートウォッチで、大まかにでも睡眠の状況が分かれば、自分が睡眠誤認であることに気づくきっかけになります。

 快眠を導くウェアラブルデバイスは、睡眠の状態を推測するものだけに限らない。ノイズをブロックし、眠気を誘う音楽を流すワイヤレスイヤホンなども市販されている。
 食品でも睡眠に着目したものが急増している。100mL中に乳酸菌シロタ株を1000億個入れて大ヒットした「Yakult(ヤクルト)1000」など現在、睡眠の質を高めるという機能性が表示された食品は実に400種類を超えるといわれています。主な有効成分は乳酸菌、GABA、L-テアニン、グリシン、コエンザイムQ10、セサミン、クロセチンなどです。

 在宅勤務が増えて通勤時間が減ったせいで、睡眠時間が増えて健康になった人もいる一方で、同じ在宅勤務によって逆に生活リズムを崩して、不眠に悩むようになり、概日リズム障害になってしまった人もいます。そのようなコロナ禍の影響で睡眠の注目が高まってきました。自己検査で結果が悪ければ病院で詳しく検査することをお勧めします。隠れ睡眠時無呼吸症候群の方は300万人いるといわれています。メタボで高血圧のある方は要注意です。