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2023年5月

「聞こえにくさ」を放置せず補聴器を活用しましょう

近年、聞き取りづらさがあると、認知障害や糖尿病、フレイル、うつ、転倒などのリスクが高くなることも分かってきました。『ときどき聞こえづらいけれど、日常生活に支障はないから大丈夫』と軽く見たり、『多少聞きづらくても補聴器など使わずに頑張っていれば耳が鍛えられる』と思い込んで大きな音やノイズを含んだ質の悪い音を聞き続けたりすると、かえって、聴力低下のスピードが速まり、さまざまな病気のリスクを高める可能性があります。

 現役世代では、職場の会議や人づきあいの中で、周囲の人は聞き取れているのに自分は聞き取れていないと気づくことが発見のチャンスになります。一方、高齢になると、テレビの音量が大きくなったり、話し声が大きくなり、身近な家族に気づかれることが多くなります。

 難聴が進行する前に発見するには、50~60代の難聴の始まりの段階で気づくことが大切です。失われた聴力は元には戻せませんが、禁煙や生活習慣病の管理など健康維持や補聴器などで適切に対策をとることによって、聴力低下の進行をゆるやかにすることは可能です。

 加齢とともに「聞き取りにくさ」は進行していきますが、「聞きにくくなる音」には特徴がある。「軽度難聴」レベルまで聴力が低下すると高音域が聞き取りにくくなることで、「t、k、s、h、p」などの無声子音が聞き取りづらくなり、言葉の聞き間違いが起こりやすくなるという。「加藤さんが佐藤さんに聞こえる(「か」と「さ」の子音の違いが聞き取りにくくなる)、数字を聞き間違える、といったことで気づく方もいます。

「軽度難聴」から「中等度難聴」レベルまで低下していくと子音に加えて「a、i、u、e、o」などの母音が聞こえづらくなり、「聞き取りづらさ」というよりも「全体に聞こえが悪くなる」ので、テレビの音量を大きくするようになります。

 聴力低下は加齢とともに誰にも起こりうる老化現象です。しかし、放置すると、認知症やうつ、糖尿病、転倒など、さまざまな病気に関係してきます。積極的な補聴器の活用が望まれます。補聴器は脳のリハビリです。最初はうるさいようでも長時間使えば脳が順応して使いこなせるようになります。

科学者とAI、21世紀の産業革命となるか

AIを備えたロボットがiPS細胞から目の細胞を作成

 神戸市にある理化学研究所の施設で人工知能(AI)を備えたロボット「まほろ」が2本の腕を器用に動かして、24時間作業を続ける。すでに体のあらゆる細胞に変化できるiPS細胞から目の細胞を作ることに成功した。最適な培養条件を見つけるには、優秀な研究者でも1〜2年かかるが、3分の1以下の120日でなし遂げたという。ロボットが作る目の細胞は今後、再生医療の臨床研究で患者に移植される予定です。
 このように最適な物を探す速さは人間の比ではない。香港に本社を置く創薬スタートアップのインシリコ・メディシンがAIで見つけた肺の難病の治療薬候補は、初期の臨床試験で優れた結果を出した。通常5〜8年かかる薬の候補物質の開発期間は約2年に短縮したといいます。

科学者は研究の速度を増すAIを使いこなす競争に

 優秀な助手となったAI。自ら仮説を立てて実験し、データを分析して法則を探す科学者の営みを代替できるのか。AIでノーベル賞級の研究成果を出すのでしょうか。
 今のAIは過去のデータから答えを導き出すのは得意だが、手段や発想の自由を与えられると途端に動けなくなる。人間にしかできないことが残されている。しかしAIの進化の速さは驚くべきものがあり、恐ろしくもある。科学者は研究の速度を増すAIを使いこなす競争に入らざるを得ない状況になりました。
 医師はAIにはできない研ぎ澄まされた感覚、技術と想像力で患者さんを診ていく必要があります。