2023/09/01
「百薬の長」今は昔 少量飲酒もがんなどリスクに
少量の飲酒であっても、がんをはじめ病気のリスクを高めるという研究報告が増えてきています。「酒は百薬の長」という言葉がありますが、「少しのお酒は体に良い」という考えは過去のものです。カナダの薬物使用・依存症センターは今年「少量のアルコールでも健康を害する可能性がある」として節酒や禁酒を勧めました。
飲酒が日本人のがん全体のリスクを高めることは「確実」と判定され、がんの部位別では大腸や肝臓、食道は「確実」、閉経前の女性の乳がんと男性の胃がんも「ほぼ確実」とされています。
酒のエタノールは肝臓でアセトアルデヒドに分解され、さらに酢酸へと解毒される。アセトアルデヒドには発がん性があるが、日本人の4割程度はアセトアルデヒドを解毒する酵素の働きが弱い。いわゆるお酒に弱く飲むとすぐ赤くなるタイプの人です。赤くなる人はアセトアルデヒドが体内にたまりやすいため酒に強い人と同じ量を飲んだときの発がんリスクが高いとされています。
日本循環器学会は今年心筋梗塞など冠動脈疾患の予防のための指針を改訂した。少量飲酒の予防効果が明確でないことなどから、アルコール摂取量を1日25グラム以下に抑えるか、できるだけ減らすことが望ましいとした。
飲酒のリスクを知って気をつけ、がん検診や健康診断をしっかり受けることも大切だ。そのうえでお酒を楽しめばよいと思います。
厚生労働省は飲酒の気をつけるべき点をまとめた指針を策定中です。お酒に含まれる純アルコール量が重要だ。がんなど生活習慣病のリスクが高まる純アルコール量は男性で1日当たり40グラム以上、女性では同20グラム以上としている。純アルコール量はお酒の度数で変わり、20グラムはビールの中瓶1本や日本酒の1合にほぼ相当する。
最近は純アルコール量を表示する飲料も増えてきた。350ミリリットル缶で度数5%のビールは14グラムだが、同9%のストロング系チューハイは25.2グラムにもなります。
多様な食品をバランス良く食べよう
「体に良い」も過ぎると「体に悪い」
食べてはいけないものなんてありません。問題は「量」です。、塩分をとり過ぎると循環血液量を増やすなどして血圧が上がりますし、糖分をとり過ぎるとインスリンによる血糖コントロールが追い付かず、血糖が上がる。また、コレステロールや飽和脂肪酸をとり過ぎると、LDLコレステロールが上がります。食事の際にコレステロールが多いものを食べたからといって、すぐに高コレステロール血症になるわけではありません。
我々の体は偏った食事をしても帳尻を合わせてくれています。しかし、偏った生活習慣や加齢によって徐々にその機能は破綻していきます。例えば糖が多いものばかり食べ続けていると、インスリンがどんどん分泌され、結果としてインスリンをつくる膵臓のβ(ベータ)細胞が疲れて機能が低下し、やがては糖尿病になってしまいます。
健診データは、病気の有無だけでなく、そういう偏った生活習慣の結果によって生じた血液中のさまざまな物質量の変化を数字で表してくれています。糖分の多いものをとり続けて、ついに糖を処理できなくなってくると、血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が上がってきます。また、毎晩、多量飲酒が続くと肝細胞が傷んで、肝機能検査の数値が上昇してきます。
いくら体に良くても、特定の食品ばかり食べ過ぎると問題が起こります。まず、自分の体を知りましょう。そのために健診データを活用してください。健診データを見て、自分の体のウィークポイントがどこなのかを知りましょう。同じような食生活をしていても、血糖値やコレステロールが上がりやすい人と上がりにくい人がいます。それこそが体質であり、個人差です。自分のウィークポイントをしっかり理解した上で、どういう食品や身体活動を取り入れるべきか考えることが大切です。
食生活で大切なのは「体に良い」特定の食品ではなく、いろいろな食品をバランス良く食べることです。健診を受けて自分の体の弱いところを自覚しましょう。