2023/10/10
感染症が発がん要因の第1位
がんは様々な原因によって発生しており、その中には予防できるものも多い。
日本人男性のがんの43%、女性のがんの25%、男女合わせると36%が生活習慣や感染が原因だと考えられています。なかでも感染は男性の発がん原因の約18%、女性の約15%を占め、男女合わせると、がん原因のトップ(17%)です。
喫煙は男性の発がん原因のトップの約24%を占めますが、女性では4%程度にとどまります。男女計では、がんの原因の2位(15%)がたばこです。これまで長い間、日本人のがんの原因のトップはたばこでした。しかし現在、男性の喫煙率は約25%、女性では8%まで低下しています。喫煙率の低下したため、がんを誘発する感染症が発がん要因の第1位となりました。感染が発がん原因のトップであることは日本に限らず、中国では発がん原因の2割、ベトナムでは3割近くを感染が占めています。一方、欧米各国では感染型のがんは5%程度です。
感染、喫煙に次いで重要なのが飲酒で、発がん原因の6%(男性約8%、女性約4%)を占めます。感染、喫煙、飲酒が三大発がん要因で、塩分過多や運動不足、大気汚染、肥満、野菜不足など、その他の要因はわずかです。
がん関連の感染症としては、胃がんの原因の9割以上を占めるピロリ菌、肝臓がんの原因の7割程度を占める肝炎ウイルス、子宮頸(けい)がんの原因のほぼ100%を占めるヒトパピローマウイルスが重要です。原因ウイルスが母乳によって感染する「成人T細胞白血病」も感染型のがんの一つです。
耳鼻科関係ではヒトパピローマウイルスによる中咽頭がんがあります。
中咽頭がん…半数以上がウイルス感染に起因
近年、のどの「中咽頭」にできるがんが急増している。中咽頭がんは舌の付け根(舌根(ぜっこん))や扁桃(へんとう)あたりの領域に発生するがんです。かつては喫煙や飲酒が主な原因となっていました。ところが、最近はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因となる中咽頭がんが増えています。日本では年間推定5000人強が中咽頭がんを発症していますが、現在はその半数以上がHPV感染によるものと推定されています。
HPVはありふれたウイルスで、子宮頸がんの原因になることが知られている。主に性的行為の際に皮膚や粘膜の小さな傷から侵入し感染するが、ほとんどは体の免疫により自然に排除されます。しかし、感染を繰り返すうちにごく一部が定着し、その状態が長く持続することでがん化していくと考えられています。喫煙・飲酒が原因の場合の発症年齢は50〜60代以降が多いのですが、HPV関連では40代でも発症します。いずれの原因でも男女比は3対1で男性の方が多い。
治療はいずれの原因でも、早期では手術か放射線治療、進行がんでは手術後に放射線治療を行うか、抗がん剤と放射線を併用する化学放射線療法を行います。
HPV関連の中咽頭がんは、喫煙や飲酒が原因となるものに比べて予後が良いことが分かっています。ただ、治療の副作用により唾液が減少することで常にのどの渇きを感じ、会話に支障を来たしたり、味覚が低下したりといった後遺症が残ることが多い。HPV関連の中咽頭がんでは、局所の腫瘍による症状より転移したリンパ節腫脹が先に気付くことが多い。
HPV関連の中咽頭がんは世界的にも急増しており、HPVに感染する前にワクチンを接種することで、発症を予防できる可能性が示唆されている。欧米の先進国ではHPVワクチンの定期接種を男女共に実施する国が増えています。
現時点では日頃から首やのどの異変に注意し、気になることがあれば早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
コロナ派生型「エリス」都内3割に 米欧で多変異新型も
米国や日本でコロナの感染者や入院患者が再び増加している
新型コロナウイルスのオミクロン型から派生し、「エリス」の俗称もある「EG.5」の感染が日本や米国など各国で拡大しています。EG.5はオミクロンの派生型「XBB」の1種に変異が加わったものです。世界保健機関(WHO)はEG.5を「注目すべき変異型(VOI)」に指定しました。東京都が8月末のゲノム解析結果でも他のXBB系統を上回って最も多くなっています。
さらに30カ所以上の変異がある新たな派生型「BA.2.86」が米国や英国、デンマーク、南アフリカなどで7月以降に見つかっています。2022年初めに日本を含む各国で大流行した「BA.2」に変異が加わったもので、「ピロラ」の俗称でも呼ばれています。
BA.2.86は互いの接触歴がない人で見つかり、米国では日本からの渡航者でも検出されたという。既に世界的に広がり、日本でも流行している可能性があります。BA.2.86は変異が非常に多いため、免疫からすり抜けやすいかもしれないと専門家は懸念しています。XBB対応ワクチンの効果が下がってしまう可能性もあります。変異の多さはワクチンや感染で得た免疫の効きやすさと大きく関係する。米ファイザーや米モデルナは派生型XBBに対応した次期ワクチンを開発し、臨床試験(治験)結果からEG.5にも有効と考えられている。EG.5とXBB系統はよく似ているからです。
今までのワクチンは今後効果がありませんので新しい現ワクチン接種を薦めます。