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2024年7月

「聞こえにくさ」を感じたら…早期の補聴器装用は大切

早めに対処することで、聴力低下の進行を抑えることは可能

聴力は40代から衰え始め、内耳の有毛細胞の劣化により60代から急激に低下し、75~79歳の約7割が難聴になります。そして、聴力の低下を放置すると認知機能の低下やうつ、事故リスクが増えるなど健康リスクにつながります。聞き取りにくくても、頑張って聞き分けようとすれば聴力は維持できると思う人がいるかもしれません。しかし、聞こえにくい状態、つまり音質が劣化した状態で無理をして聞き取ろうとすることで、脳には過大な負荷がかかります。

 音の振動を電気信号に変えて脳に伝えているのは内耳にある「有毛細胞」です。しかし残念ながら有毛細胞は加齢によって劣化し、数が減っていきます。劣化した有毛細胞は再生できません。
脳は、耳から入った音声の情報処理をし、周囲の雑音の中から必要な音だけを聞き分けたり、言葉の意味を理解したりという複雑な仕事を担当しています。

聞こえにくさに対して何も対策をとらないと、人との交流に消極的になり、趣味の活動や仕事など、さまざまな活動をあきらめてしまうことが増えてきます。こういった行動の変化は脳の音声情報処理活動の機会を減らし、さらなる聴力の低下や認知機能の低下につながっていきます。補聴器などを活用し、質の良い音を聞けるようになることによって、脳の音声情報処理機能が再トレーニングされ、聞き取る能力を維持していくことができます。

補聴器を使い始めたその日からすぐに表れるものではない

 ただし、この再トレーニングの効果は、補聴器を使い始めたその日からすぐに表れるものではありません。人によって異なりますが、3カ月から1年の間、ずっと両耳から質の良い音を入れ続けることで徐々に効果が出てきます。

特に、聞こえにくい状態が長年続き、それに脳が慣れている状態で補聴器を使い始めると、適正な音を入れても脳でうまく処理されず、最初は不快に聞こえることが少なくないといいます。しかし、使い続けているうちに脳が再トレーニングされて音が聞こえるようになるのです。年齢が若く“難聴歴”が短いうちのほうが、脳の再トレーニングも行いやすいため、聴力低下を自覚したら何歳であっても医療機関を受診し、必要に応じて補聴器を活用するなど、早めに手を打つことが大切です。

 補聴器というと、「聴力がかなり低下した高齢者が使うもの」と思っている人も多いかもしれません。最近の補聴器の進化はめざましく、Bluetooth搭載の補聴器では、携帯電話とのペアリングにより、装用者は電話の着信を補聴器で受け、相手の音声を補聴器から直接聞き、自分の声も補聴器内蔵のマイクで拾われるため、通話のしやすさは飛躍的に向上しています。いろいろな機能を使いこなせる年齢のうちに使用開始することが望ましいとも言えます。視力が低下した人がメガネやコンタクトレンズを使うのと同じように、早めに補聴器を使い始めることが大切です。

 声が聞き取りづらいと思った段階で、何歳でも補聴器を使い始めていい。補聴器は「管理医療機器」であり、買うときは医師に相談のうえ、患者本人に合う適切なものを選んでください。「音が聞こえにくい」「普段聞いている音がいつもと違って聞こえるようになった」などの自覚症状がある場合は、耳鼻咽喉科で一度、聴力検査を受けてみましょう。

 聴力低下に他の病気が隠れていないか、耳垢がたまっているせいではないか、聞こえの状態はどうなのかなど正確に診断してもらうことが重要です。