2025/02/27
2月の寒さを抜け、3月は年度末で人事異動の送別、卒業、花見と飲酒の機会が多くなります。しかし飲みすぎると肝臓、癌、心筋梗塞、脳卒中などのリスクを高めます。「酒は百薬の長 されど万病の元」です。日本人はアルコール耐性が弱い人が多いため、注意が必要です。耳鼻咽喉科に関係するがんは多くは飲酒と関係しているのです。
飲酒の影響を受けやすいがん…リスク上昇が大きいのは「酒の通り道」
今や日本人の2人に1人が「がん」にかかる時代になっている。私たちが日々楽しんでいる酒はがんのリスクを高める要因のひとつです。
日本人において少量の飲酒でもがんのリスクになるといわれている。1日当たり日本酒1合(純アルコールにして23)の飲酒を10年間続けることで(10drink-year)、お酒をまったく飲まない人に対し、何らかのがんにかかるリスクは1.05倍上がるという。
最もリスクが高かったのは『食道がん』で、そのリスクは1.45倍になりました(10drink-yearの場合)。また、『口腔及び咽頭がん』も1.10倍という結果が出ています。飲酒によってがんのリスクが上がるのは、食道より上部の器官、つまり『お酒の通り道』になるところ。なお、気管と咽頭をつなぐ器官である「喉頭」のリスクも1.22倍と高い。
食道がんの場合は、1日1合の飲酒を10年間(10drink-year)で1.45倍だったリスクが、1日2合で30年間(60drink-year)なら4倍を超える。飲酒による口腔、咽頭がんや食道がんは同時になることもあり治療を困難にします。
また、胃がん(1.06倍)、大腸がん(1.08倍)なども、がん全体と比べてリスクが若干高くなっている。女性では乳がんのリスクが1.08倍、子宮頸がん(1.12倍)である。このほか、前立腺がん(1.07倍)などもリスクは高めとなっている。
がんのリスク上昇は「酒の総量」で種類ではない
がんの罹患リスクをできるだけ上げないために、例えば醸造酒や蒸留酒といった酒の種類を変えるといったことで対策にならない。ポイントは「お酒の総量」。
アルコールそのものに発がん性があり、さらにアルコールの代謝副産物であるアセトアルデヒドはがんの原因となる。私たち日本人は遺伝的にアセトアルデヒドの分解能力が低い人が一定数おり、少量でも影響を受けやすい。このことから、飲み始めた年数から今に至るまでどれだけアルコールを飲み、そのリスクにどれだけさらされてきたかが重要となる
実際のところ、お酒好きの人がお酒を完全にやめることは、なかなかできません。しかし、この結果を知っているのと、知らないのとではお酒に対する意識が違ってくる。1日1合程度という適量を目標に、飲む量は減らしたほうがいい。総量に留意し、今飲んでいる量より少しでも減らすことを目標にしてください。
さらに、お酒を飲む習慣を見直し「飲むクセ」を変え、最初は週に1日でいいので、休肝日を作ってみましょう。お酒と一緒に水を飲むと、血中アルコール濃度の急激な上昇を抑制し、アルコールによる脱水を防ぎます。一気飲みせずにゆっくり飲む、酒だけを飲まずに食べ物も一緒にとる、といったこともお勧めです。