2008/06/01
禁煙により女性の心疾患リスクは急速に低下 6月号
禁煙した女性では、5年後の心疾患死亡リスクが47%低下し、その他の疾患にも、時間の差こそあれ死亡リスクが低下することが、米国の研究で明らかになりました。
喫煙は、米国においては依然として予防可能な死因のトップとなっている。喫煙は肺癌(がん)だけでなく、心疾患、その他の癌、呼吸器疾患にも影響します。呼吸器疾患は、先進国の約300万人が2030年までに喫煙が原因で死亡し、途上国ではさらに約700万人が死亡すると予測しています。
今回の研究は、米国の10万人以上の女性が参加した22年間のデータを検討したもので、現在も追跡調査が行われている。その結果、現在も喫煙している女性は、喫煙未経験者に比べて全死亡リスクが3倍高かった。また、大腸癌(がん)リスクは、喫煙未経験者より喫煙者で3倍高く、禁煙者では23%高かった。喫煙と卵巣癌に有意な関連性は認められなかった。若年齢で喫煙を開始した女性では、全死亡リスク、呼吸器疾患や喫煙が関連する死亡リスクがより高かった。
しかし、喫煙者の全死亡リスクは、喫煙後20年間で未喫煙者レベルまで戻っており、禁煙後最初の5年以内では13%低下していた。冠動脈性心疾患(CHD)による死亡リスクは、禁煙後5年で正常に戻っていた。また慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関しては、禁煙後5~10年で死亡リスクが13%低下していたが、正常に戻るまでには20年以上要していた。肺癌リスクについては、喫煙継続者に比べて禁煙者では5年以内にリスクは21%低下していたが、禁煙30年後では正常レベルには戻っていなかった。
喫煙の害は可逆性であり、非喫煙者のレベルまで低減させることができる。
禁煙するのに早すぎることはないが、遅すぎることもない。当院ではなかなか禁煙できない人に対し新しい禁煙治療薬(飲み薬)を処方しています。
肥満は大腸・乳がんなど種々のがんのリスク…がん予防では体重管理も重要 6月号
世界がん研究基金と米国がん研究機構は食道、膵臓、大腸、子宮内膜、腎臓、乳房(閉経後)のがんは肥満との関連が確実であると判定しています。
わが国でも男性の肥満者が増加しており、肥満に伴うがんの増加が予想されます。がん予防においても運動や適切な栄養摂取とともに体重管理の重要性が広く認識されることが望まれます。
世界がん研究基金と米国がん研究機構は7,000を超える疫学研究を分析し、報告書「食物・栄養・運動とがん予防」があります。そのなかで、腹囲が1インチ(2.54cm)増えるごとに大腸がんのリスクは5%増加すると報告しています。乳がんについては閉経前女性ではBMI(BMI=体重[kg]/身長[m]の2乗)が2増加するとリスクは6%低下するが、閉経後では逆に3%増加し、ウエスト・ヒップ比が0.1増えるごとにリスクは19%増加する。また、肥満により子宮内膜がんのリスクは52%増加、食道がん(腺がん)のリスクも2倍以上増加するとしている。
わが国において肥満度と大腸がんとの関連を検討した研究でも、肥満により大腸がんのリスクが増加することが示されています。また、20歳以降の体重増加は閉経後乳がんの発症リスクを増加させることも報告されています。従来、がん予防では野菜・果物などの摂取が推奨されたが、2007年の報告書「食物・栄養・運動とがん予防」は第1のがん予防として成人期を通じて体重増加と腹囲増大を避けることを推奨しています。
一方、日本人を対象とした追跡研究ではやせでもがん発生や全死亡のリスクが高まることが示されています。BMIを18.5から25におさめるようにしましょう。BMIの計算が面倒な方はインターネットで簡単に計算してくれるサイトが多くありますので活用して下さい。