2010/09/01
ほとんどの抗生物質が効かない新型多剤耐性菌
耐性菌とは、病気治療に抗生物質を多用するうちに、病原菌が生き延びるために抵抗力を持ったものをいう。中でも複数の抗生物質が効かない菌が多剤耐性菌だ。新型は多剤耐性菌のうち、薬の成分を分解する酵素「NDM―1(ニューデリー・メタロ―β―ラクタマーゼ1)」を持つ大腸菌や肺炎の原因菌を指す。
インドで発見された。ほとんどの薬が効かず誰にでも感染して病気を引き起こす可能性がある。
広範囲に感染が広がる潜在的な脅威があり「スーパー耐性菌」とも呼ばれる。帝京大学病院で感染例が見つかったアシネトバクター菌は皮膚や水中にいるが、病気を起こす性質が大腸菌などに比べて弱い。
病気で入院している免疫力の低下した患者間での感染が問題になっている。これに対し、新型多剤耐性菌は健康な人にもうつることがある。
通常の大腸菌でも、体力が衰え抵抗力が低下していると、ぼうこう炎などを起こす。普通なら抗生物質で治療できるが、多剤耐性菌だと薬は効かない。肺炎の原因となる肺炎桿菌(かんきん)の場合も同様だ。
しかし免疫力が弱まっている人に感染し血液中に入ると毒素を出し、敗血症で死に至るケースもある。
今後、国内で感染が広がる恐れは十分にあります。今のところ独協医科大病院で見つかった新型多剤耐性菌では感染の広がりは報告されていない。
健康な人に感染する可能性があるとはいえ、普通に抵抗力があれば心配はない。
現時点で感染拡大の恐れは少なく、一般の人が警戒するような事態ではない。冷静な対応が求められる。
ただ、海外で感染して国内に持ち込む人が続出し、気づかない間に保菌者が増えて病院内などで広まると問題です。
海外では医療費が多少かさんでも、信頼できる医療機関にかかるべきだ。医療関係者や国は、日常的に病原菌の種類や広がりを監視し、患者の隔離などの対策をとれるようにしておく必要がある。
大腸菌と肺炎桿菌はサルモネラ菌や赤痢菌の親せきで、これらと遺伝子をやりとりしやすい。
サルモネラ菌などに新型多剤耐性菌のNDM―1の遺伝子が入ると、重症者が増える恐れもある。
治療は新たな抗生物質の開発を待つしかない。
たとえば多剤耐性菌による膀胱炎を発症した場合に耐性を示している抗菌薬を服用すれば、多剤耐性菌のみが増加して症状が重篤化する恐れがある。
基礎体力を付け、一定の抵抗力を維持する心がけも必要です。
携帯電話による電磁界と腫瘍発生の関連は?
携帯電話は十数年前から本格化し、当初伴って発生する電磁波ががんを発症させるなど健康に有害であるとの風評がありました。
今でこそそのようなことを心配する人は少なくなりました。
電気や電波の利用にともなって発生する電磁界は、熱作用と刺激作用を持つことが知られており、これらの作用による健康影響を防止することを目的として電波防護指針が設定されている。
携帯電話の使用が腫瘍を増加させるのか日本を含む13カ国が参加する国際共同多施設研究として計画、実施された。
これは脳腫瘍に焦点を当て10年間の調査の結果、携帯電話による腫瘍の増加は認められませんでした。
さらなる長期の観察は必要ですが今のところ健康への影響は少ないと思われます。
たばこを吸わなくても肺がんになる
芸能リポーターの梨元勝さんが先月21日、肺がんで亡くなった。しかし梨元さんに、喫煙の習慣はなかったという。
たばこを吸わなくても肺がんになるの?日本人の死因のワースト1位はがんだが、その中でも最も年間死亡者数が多いのが肺がんだ。
喫煙が肺がんの危険要因であることはよく知られている。
国立がん研究センター資料によると、日本人を対象にした研究で、喫煙者は非喫煙者に比べ、肺がんになる危険性が男性で4・4倍、女性で2・8倍高い。欧米では、さらに高く20倍以上とされている。
ただ、その一方で、最近は、たばこを吸わない人にも肺がんが増えている。一口に肺がんといっても、顕微鏡で見た時の細胞の形などから、主に4種類に分類される。肺の入り口の太い気管支付近に多い「扁平(へんぺい)上皮がん」と「小細胞がん」は、喫煙との関係が特に深い。
これに対し肺の末梢側(外側)にできる「腺がん」は、肺がんの過半数を占めるとされるが、たばこを吸わない人でもかかることがある。
最近目立つ、非喫煙者の女性の肺がんは、ほとんどがこのタイプだ。末梢側(外側)に出来やすい種類にはこのほか「大細胞がん」がある。
日本胸部外科学会の調査では、全国で1997年に手術した肺がん患者のうち、扁平上皮がんが30%、腺がんが60%だった。
ところが、2007年には扁平上皮がん21%に対し、腺がんは68%。ここ10年のうちに腺がんの割合が増える傾向にある。
たばこを吸わない人の肺がんが増えているのです。肺がんは予後の悪いがんの一つです。早期がんの時期に治療しなければ治癒しません。
しかし初期の段階では症状がありません。単純写真でも心臓の陰に隠れて見つけにくいこともありますのでCT検査が確実です。
治療は手術が基本ですが、放射線治療や化学療法(抗がん剤)を組み合わせます。同じ肺がんでもタイプによって抗がん剤の効果にも差があります。
最近では、がん細胞を取って調べた結果に基づき、抗がん剤を使い分ける治療が進んでいます。
梨元さんの所属事務所によると、梨元さんの肺がんの種類は細胞検査でも判別しなかったという。
本人には喫煙習慣がなくても、受動喫煙の影響があった可能性もある。
非喫煙者のがんが増えていると言っても、喫煙者の方がリスクが高いことは明らかです。
予防のためには、禁煙が重要です。