2016/08/04
がん治療が変わる ~新・免疫療法~
先日、機会がありまして札幌医科大学医学部病理学第一講座教授の鳥越俊彦先生の講演を聞きました。
「癌を免疫で治す時代の到来」という演題で大変興味のある内容でした。進行がんやある種の転移を起こしやすいがんは外科手術をしても救済できないことがあります。
昔は丸山ワクチンとか蓮見ワクチンといった一種の民間療法まがいのワクチンがありました。このようなワクチンとは全く違う治療が始まったという話です。
がんは遺伝子病です。がん細胞は正常細胞が発現していないような遺伝子を高レベルに発現しているにもかかわらず、免疫細胞からの攻撃を上手にすり抜けて、免疫細胞に攻撃されないものとして大きくなってきたものです。免疫細胞はがん細胞を攻撃しています。しかし、がん細胞もやられる一方ではありません。攻撃されたがん細胞は、ある方法で反撃を始めます。実は免疫細胞には攻撃を止めるブレーキボタンがあります。攻撃を受けたがん細胞は腕を伸ばし、このボタンを押すのです。すると、免疫細胞は攻撃をやめてしまいます。その結果、がん細胞は増え、がんが進行していくのです。
つまり、免疫細胞にはアクセルとブレーキがあるのです。これまでの従来のがんに対する免疫療法の開発というのは、このアクセルを踏むことばかりを考えて、どのように免疫細胞を活性化しようかということを考えてました。ところが、免疫細胞をどんなに活性化しても、やはりがんの局所でこのブレーキを押されて、免疫細胞がブレーキをかけられてしまうと、これはがんを攻撃できないのです。
この免疫療法はブレーキを外すという非常に画期的な、新しい治療法で「免疫チェックポイント阻害剤」という薬です。ただ、この薬はすべてのがんに有効ではありません。今どのようながんに有効なのか研究が続けられています。現在、日本では皮膚がんの一種メラノーマというがんに対して、このお薬は承認を受けています。欧米では、肺がんに対して承認を受けています。腎臓がんや、ホジキンリンパ腫というがんも非常に効きやすいというような報告も出ています。
すい臓がんや前立腺がん、大腸がんというものは、なかなか効きにくい。また頭けい部がん(咽頭がん、喉頭がんなど)、卵巣がん、胃がん、乳がんというのは効く可能性があるということで、現在、多くの臨床研究がされています。
免疫システムというのは、このような変異のあるたんぱくを認識して、これを攻撃する能力がありますので、やはりそのようながんというものは、この免疫チェックポイント阻害剤というものが効きやすい。遺伝子変異の数が多いと免疫細胞の力も大きくなります。
免疫システムというものは、自分自身は攻撃をしないが、自分以外のものは攻撃をできるという能力を持っています。体の中に存在する、変異のあるがん細胞は自分自身以外のものを持っているということで、攻撃をしてくれるということになります。
この薬は良いことばかりではありません。10人に1人重篤な副作用が出ます。このチェックポイント分子というものは、免疫細胞が暴走しないように働いている分子ですから、そのブレーキを外すと、免疫細胞が暴走することによる副作用というものが起こってきます。例えば肺の炎症、大腸の炎症、中には重症筋無力症という特殊な病気が起こる方がでてきます。
免疫療法というものは、非常に画期的ですが、やはりがんが免疫をすり抜けてきた、
このメカニズムをはっきりさせることで、よりよい治療法が出来ます。
今後は、ブレーキを外しながらアクセルを踏むという研究が重要になります。
非常に高額な薬で世間を騒がしていますが
安く、広く、安全に使えるようになる時代が来ることを期待します。
「癌を免疫で治す時代の到来」という演題で大変興味のある内容でした。進行がんやある種の転移を起こしやすいがんは外科手術をしても救済できないことがあります。
昔は丸山ワクチンとか蓮見ワクチンといった一種の民間療法まがいのワクチンがありました。このようなワクチンとは全く違う治療が始まったという話です。
がんは遺伝子病です。がん細胞は正常細胞が発現していないような遺伝子を高レベルに発現しているにもかかわらず、免疫細胞からの攻撃を上手にすり抜けて、免疫細胞に攻撃されないものとして大きくなってきたものです。免疫細胞はがん細胞を攻撃しています。しかし、がん細胞もやられる一方ではありません。攻撃されたがん細胞は、ある方法で反撃を始めます。実は免疫細胞には攻撃を止めるブレーキボタンがあります。攻撃を受けたがん細胞は腕を伸ばし、このボタンを押すのです。すると、免疫細胞は攻撃をやめてしまいます。その結果、がん細胞は増え、がんが進行していくのです。
つまり、免疫細胞にはアクセルとブレーキがあるのです。これまでの従来のがんに対する免疫療法の開発というのは、このアクセルを踏むことばかりを考えて、どのように免疫細胞を活性化しようかということを考えてました。ところが、免疫細胞をどんなに活性化しても、やはりがんの局所でこのブレーキを押されて、免疫細胞がブレーキをかけられてしまうと、これはがんを攻撃できないのです。
この免疫療法はブレーキを外すという非常に画期的な、新しい治療法で「免疫チェックポイント阻害剤」という薬です。ただ、この薬はすべてのがんに有効ではありません。今どのようながんに有効なのか研究が続けられています。現在、日本では皮膚がんの一種メラノーマというがんに対して、このお薬は承認を受けています。欧米では、肺がんに対して承認を受けています。腎臓がんや、ホジキンリンパ腫というがんも非常に効きやすいというような報告も出ています。
すい臓がんや前立腺がん、大腸がんというものは、なかなか効きにくい。また頭けい部がん(咽頭がん、喉頭がんなど)、卵巣がん、胃がん、乳がんというのは効く可能性があるということで、現在、多くの臨床研究がされています。
免疫システムというのは、このような変異のあるたんぱくを認識して、これを攻撃する能力がありますので、やはりそのようながんというものは、この免疫チェックポイント阻害剤というものが効きやすい。遺伝子変異の数が多いと免疫細胞の力も大きくなります。
免疫システムというものは、自分自身は攻撃をしないが、自分以外のものは攻撃をできるという能力を持っています。体の中に存在する、変異のあるがん細胞は自分自身以外のものを持っているということで、攻撃をしてくれるということになります。
この薬は良いことばかりではありません。10人に1人重篤な副作用が出ます。このチェックポイント分子というものは、免疫細胞が暴走しないように働いている分子ですから、そのブレーキを外すと、免疫細胞が暴走することによる副作用というものが起こってきます。例えば肺の炎症、大腸の炎症、中には重症筋無力症という特殊な病気が起こる方がでてきます。
免疫療法というものは、非常に画期的ですが、やはりがんが免疫をすり抜けてきた、
このメカニズムをはっきりさせることで、よりよい治療法が出来ます。
今後は、ブレーキを外しながらアクセルを踏むという研究が重要になります。
非常に高額な薬で世間を騒がしていますが
安く、広く、安全に使えるようになる時代が来ることを期待します。