2017/10/05
良質な睡眠をとるために
涼しくなり夜は寝やすい季節となりました。特にCPAP治療を受けている方はマスクがしやすくなり、継続するにはよい季節です。睡眠時無呼吸の方だけでなく、睡眠不足や質の低下は、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めます。脂肪が燃焼しやすい、肥満や生活習慣病になりにくい体をつくるには、しっかり睡眠を取ることが必要です。大人の睡眠の場合には、寝はじめの3時間が最も深い睡眠になり、その期間に成長ホルモンが集中して分泌されるので、この時間帯は途中で目覚めることなく、深い眠りに入っていることが重要になります。
そのためには
① 寝る直前の「糖質」摂取は控える
ご飯やラーメン、パンやうどんといった糖質を多く含む食べ物を摂取すると血糖値が急上昇して、上がった血糖値を抑えようと大量のインスリンが分泌されます。インスリンが血中に多くあると、成長ホルモンの分泌が抑えられ、深く眠れないだけでなく体脂肪を蓄えやすい体をつくってしまいます。肉や魚、卵といった動物性たんぱく質に加え、豆類などの植物性たんぱく質は疲労の回復にも役立つ成長ホルモンをつくる材料となり、脂肪の分解を促すことにつながります。
② 夕方以降はカフェインの摂取を控える
覚醒作用のあるカフェインは、交感神経を刺激して気分を高揚させたり、集中力を高めたりする働きがあります。カフェインは摂取してから4~6時間は作用が持続するため、夕方以降に飲むと、夜の眠りに影響を及ぼします。
③ 寝酒を睡眠薬代わりに使わない
アルコールには睡眠導入作用があるため、お酒を飲むと眠くなります。しかし、体内に入ったアルコールは代謝の過程でアセトアルデヒドを生成します。このアセトアルデヒドは覚醒物質なので、睡眠途中で目が覚めたり、眠りが浅くなります。眠りの質を高めるなら寝酒をしないのが鉄則です。
入浴後に就寝する際、体の表面から熱が放射され、体の中心の温度である『深部体温』が下がります。人間の体は深部体温が下がるタイミングで眠くなるので、スムーズに深い眠りにつくことができます。入浴のタイミングは、就寝の1時間前。湯船の温度は、通年で38~40度とややぬるめに設定するのが良いです。熱すぎると、かえって体に負担をかける原因にもなります。
このほか、寝る直前まで、スマホやパソコンのディスプレーを見るのも熟眠を妨げる行為なので、習慣になっている人はやめましょう。スマホやパソコンのディスプレーから発せられるブルーライトの刺激を受けると、目の網膜を通じ、脳が「朝」と認識し、交感神経が刺激されて覚醒してしまうためです。
自律神経の乱れや睡眠不足と関係がある耳の病気
ある日突然、回転性のめまい、激しい嘔吐などとともに、難聴や耳鳴り、耳詰まり感が起きる。この発作は数時間続く。内耳で内リンパ水腫が起きることが原因だが、詳しい機序は不明。治療を受けずにいると、再発を繰り返し、そのたびに症状が増悪し、聴力が低下します。
耳の構造は複雑で機能も繊細なため、突発性難聴、低音部型難聴、メニエール病のいずれも詳しい発生機序は分かっていない。しかし、背景に寝不足、疲れ、ストレスがあるのは間違いない。これらが脳の自律神経の働きに影響を与え、発症に関わっていることが研究で明らかになってきました。難聴は耳の病気だが、もとをたどれば脳のトラブルといえます。疲れやストレスを感じると、自律神経は戦闘モードの交感神経が優位に。常にストレスを感じているとリラックスモードの副交感神経への切り替えがうまくいかず、交感神経の緊張が続いてしまう。それによって脳全体も興奮し、心臓の動悸が激しくなるなど臓器にも負荷をかけることになります。
本来ならこれは異常な事態。しかし、ストレスが日常化している人にとってはこの異常が当たり前として恒常性を保とうとする。突発性難聴、低音部型難聴、メニエール病も、この無理によって引き起こされる。病気の改善には、適切な治療を受ける一方、心と体をリラックスに導くようにストレスを調節するなど、生活習慣の改善が重要です。
最近、気圧の変化を察知する『気圧センサー』が内耳に存在することが分かった。それが自律神経、特に交感神経に影響を及ぼすことで痛み、めまいなどの症状が表れる。日ごろストレスで不眠になるなど自律神経が乱れやすい人は、気象病になりやすい。雨の前や台風が近づくとめまいがひどくなったり、耳鳴が起こりやすくなります。めまいの治療は起こった背景も考慮して治療する必要があります。