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2019年12月

インフル新薬「ゾフルーザ」による変異ウイルス、感染力同じ

 

厚生労働省は11月15日、インフルエンザが流行入りしたと発表しました。昨年よりも4週早く、新型インフルエンザが夏に流行した2009年を除くと、統計がある1999年以降で最も早い。都道府県別で患者が最も多いのは沖縄県。次いで鹿児島県、青森県、長崎県と続き、18都道県で流行入り水準に達しました。幼稚園、小学校、中学校で34件の学級閉鎖や学年閉鎖が例年よりも多くなっています。ただ、学級閉鎖などを行うと、地域での感染拡大がある程度は抑えられる傾向があります。そのため、一旦は感染者が減少し、その後にまた増加していくことも考えられます。一方、現在の流行が緩やかに続いていく可能性もあり、現時点では予測が難しいところです。

季節性インフルエンザにはA型とB型があり、A型には「AH1pdm09(2009年に新型インフルエンザとして流行した型)」と「AH3(いわゆる香港型)」があります。3年ぐらい前までは、「AH1pdm09」と「AH3」が交互に流行し、年明けから春先にかけてB型が増えるというのが、典型的な流行のパターンでした。しかし、2017~2018年のシーズンは、当初からB型が流行し始め、ほぼ同時期に「AH1pdm09」、次いで「AH3」が増えました。そのため、シーズン中に複数回、インフルエンザを発症する人が増えています。流行のパターンが変則的になっているのに加えて、例年よりも早い流行入りもあり、今後どのような流行の仕方をするのか、経過を見ていく必要があります。

早めのワクチン接種を。

特に、インフルエンザにかかると重症化しやすい乳幼児や高齢者、呼吸器に基礎疾患がある人、免疫が低下している人などは、接種しておくといいでしょう。インフルエンザのワクチンは、接種してから抗体がつくまでに約2週間かかります。ワクチンの接種は10月から始まっていますので、お住まいの地域で流行が始まっている場合は、早めの接種が勧められます。

ただし、インフルエンザのワクチン接種は、あくまでも重症化を防ぐことが目的です。ワクチンを接種したとしても、感染することはあります。どんなワクチンでも時間がたてば、徐々に抗体価が低下して、予防効果が薄れていきます。2回接種すれば効果が高まるという根拠も特になく、健康な大人の場合は、1回の接種が基本と考えればよい。

ワクチンを接種したとしても、手洗いなど日常的な予防も必要。

インフルエンザの主な感染経路はくしゃみや咳(せき)による飛沫感染ですが、ウイルスが付着した物やドアノブ、手すり、つり革などを手や指で触れ、その手や指で鼻や口、目を触ることでも感染しますので、こまめに手を洗う習慣をつけましょう。アルコール性手指衛生剤での洗浄も有効です。


 

今年のインフルエンザ治療薬

ゾフルーザは、ほかの治療薬(タミフル、イナビル、リレンザ、ラピアクタ)とは違うメカニズムでインフルエンザウイルスに働きます。
インフルエンザウイルスに感染すると、呼吸器の細胞の中で増殖し、細胞から飛び出して別の細胞へと広がっていくのですが、タミフルなど、ゾフルーザ以外の薬は、増殖したインフルエンザウイルスが細胞から飛び出すのを妨げることで、病気の進行をくい止めます。

一方、ゾフルーザは、細胞の中でウイルスが増殖する仕組みを遮断し、増殖そのものを抑える働きがあります。その特徴は、1回の内服で済み、かつウイルスの排出がいち早く止まることです。ゾフルーザは昨年3月に販売開始、抗インフルエンザ薬の中で最も多く使われました。一方で変異ウイルスが高い頻度で出ることは以前から問題となっており、日本感染症学会は10月、12歳未満には慎重に投与するよう提言しています。19年春にはゾフルーザを服用していない患者から変異したウイルスが数例見つかっています。異株が人から人にうつる可能性が高いことを表しています。
当院ではこれを踏まえてゾフルーザは極力使用せず、従来の内服、吸入薬の使用方針で臨みます。