【営業時間】9:00~12:00 15:30~19:00
TEL.059-244-2222

2020年3月

肺炎は実地臨床でよく遭遇する一般的なよくある病気の一つであると同時に、死亡率も高い重要な疾患です。肺炎の原因となる病原体は数多くあります。ウイルス感染症の診断法の進歩に伴い、肺炎におけるウイルスの重要性が注目されてきました。

肺炎に関与する多くのウイルス

 

ウイルス性肺炎を病態でみると、気道に親和性を有する呼吸器系ウイルスが上気道に感染し下気道に感染が拡大していく場合と、ウイルス血症を伴う全身性ウイルス感染症の肺病変としてみられる場合に分けることができます。前者には、インフルエンザウイルス、ヒトRS ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、SARS ウイルス、などが挙げられます。後者には、サイトメガロウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、などがあります。

市中肺炎全体の24.1%に呼吸器系ウイルスが検出され、下気道検体が得られた研究に限定すると、その頻度が44.2%にのぼるとされています。肺病変の形成にどのようにウイルス感染が関与しているのかについては今後の検討課題でありますが、従来考えていたよりも、市中肺炎におけるウイルス感染の関与は大きいということが示されてきました。近年、実地臨床におけるウイルス感染症の診断は迅速化され、ウイルス感染による肺炎を臨床的にリアルタイムに捉えることが可能となってきました。臨床上重要な呼吸器系ウイルス感染症の抗原検出キットが臨床応用されています。日本では、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、ヒトRS ウイルス、ヒトメタニューモウイルスの抗原検出診断キットが市販され、ベッドサイドでのウイルス感染症診断が可能となっています。

 

ウイルス性肺炎の治療戦略について

肺炎に関与するウイルスで最もよくその病態が理解されているのはインフルエンザウイルスです。インフルエンザに伴う肺炎では、ウイルス感染そのものによる純粋なウイルス性肺炎と、細菌性肺炎を合併したもの、ウイルス感染が軽快した後に細菌感染を合併する場合があります。
インフルエンザによる肺炎の治療にはノイラミニダーゼ阻害作用を有する抗インフルエンザ薬が適応となり、できるだけ早期から抗インフルエンザ薬を投与することが推奨されます。水痘・帯状疱疹ウイルス感染の臨床診断は特徴的な皮疹を確認することがまず重要となります。サイトメガロウイルス感染は臨床像と血中サイトメガロウイルス抗原検出や血中ウイルス量の定量に基づいて臨床診断を行います。水痘帯状疱疹ウイルスや単純ヘルペスウイルスではアシクロビルの投与、サイトメガロウイルス感染ではガンシクロビルやフォスカルネットの投与が適応となります。その他の呼吸器系ウイルス感染症に対する抗ウイルス薬の治療はいまだ確立されていません。コロナウイルスも同じです。

正しい「咳エチケット」を知っていますか?

 通常の風邪やインフルエンザと同じく、新型コロナウイルスについても、「咳エチケット」と「手指の衛生」が2大対策となる。

マスク着用の注意点
 日本では感染症の予防策としてマスクをつけている人が多いが、マスクは、咳やくしゃみなどの症状がある人が飛沫をまき散らさないようにするために使うか、症状がある人と近距離で接する人が使うのがいい。マスクを着用する際は、きちっと口や鼻を覆う、針金状の物が端に入っているタイプのマスクの場合は、それを曲げて鼻に沿わせる、といったことも重要だ。
 もう一つ気をつけたいのはマスクを「外す時」。マスク表面にはウイルスが付着している可能性があるため、マスクの中央を不用意に持つようなことはせず、ゴムヒモ部分だけを持って耳から外し、そのまま表面には触れずにゴミ箱に捨てることが重要だ。できればマスクを取った後に手を洗うとベストです。

アルコールはたっぷりと手全体に
 感染症対策のもう一つの柱「手洗い」は、「せっけん」を使って洗い、「流水」で洗い流すこと、そして「アルコール」も有効です。 せっけんの泡を付けて手のひらや甲、指と指の間などをこすり、こする時間の目安は15~20秒。水で洗い流す時間も含めて30秒はかけるのが理想です。
 アルコールについては、「量」がポイント。「指先などに少しだけ使うのではなく、手の指の間からこぼれ落ちるくらいたっぷり手に取り、手全体をアルコールで覆うように使うのがコツです。

中国の新型コロナ患者の8割は軽症、死亡者の多くが高齢者または持病あり
7万人超のデータを分析、致命率は2.3%

 世界中を揺るがせている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で、2月17日、これまでで最大規模となる7万人超の患者の分析データを中国疾病対策予防センタ−(中国CDC)が発表しました。新型コロナウイルスの感染が確定した患者の8割は軽症で、致命率(患者数に対する死亡者数の割合)は2.3%、死亡者の多くが60歳以上の患者か、併存疾患(心血管疾患、高血圧、糖尿病など)のある患者でした。

 分析対象は、中国で新型コロナウイルス感染が確認された確定例4万4672人。30~60代の患者が8割を占め、10代までの若年層は患者数、致命率ともに低かった。重篤な患者(肺での呼吸がうまくいかない呼吸不全が発生、感染症による炎症が全身に及び低血圧が持続するショック状態が発生、多臓器不全が発生する)の致命率は非常に高く(49%)、ほぼ2人に1人が死亡していました。 併存疾患がなかった患者の致命率は0.9%で、併存疾患のある患者、特に心血管疾患(心筋梗塞、狭心症、脳卒中など)を抱えていた患者の致命率は10.5%と高くなっていました。

 日に日に知らないうちに感染している例が増加しています。健康で合併症のない方は恐れる必要はありません。何某らかの合併症を抱えている高齢者は感染しないよう心がけましょう。