2020/08/06
喫煙指数(=1日のタバコ本数×喫煙してきた年数)をチェックしましょう
肺は常に外気にさらされていて、タバコや大気汚染の影響を受けやすい臓器です。タバコを主原因とする肺の病気「慢性閉塞性肺疾患」(以下、COPD)になると、新型コロナやインフルエンザのようなウイルス、肺炎球菌などが入り込んだ場合に、重症化しやすい。
COPDは、タバコを吸う人のみならず、すでに禁煙した人にも起こり得る。それどころか、タバコを吸わない人も、タバコから立ち上る煙(副流煙)によって悪影響を受けている恐れがあり、誰にとっても人ごとではありません。COPD患者の中には、まだ病気にかかっている事実に気づいていない「隠れCOPD」も存在する。その数は500万人以上という推計されています。病気の存在に気づかず、治療を受ける機会もない状態で感染症にかかると、急に悪化して命を落とすこともあります。志村けんさん例がそうです。しかし、COPDのタイプによっては、進行してもレントゲンに映らないこともあり、胸のレントゲンだけで知ることは困難です。健康診断で受けたレントゲン検査では異常なしと判定されてしまいます。どんな病気にも言えることだが、COPDを早く発見することには多くのメリットがある。最も注意すべきは肺がんで、COPD患者は、健康な人の約10倍も肺がんを合併しやすいといわれている。そのため、COPDが早く見つかれば、肺がんのハイリスクグループとして重点的に肺がんのスクリーニングを行うことができます。
今もタバコを吸っている人は、年1回の肺機能検査を受けよう
COPDの診断には、肺の機能を調べる『スパイロメトリー』という検査が必要です。スパイロメトリーとは、スパイロメーターという器具を使って、肺機能の良し悪しを調べる検査です。マウスピースを口にくわえて、指示に従って呼吸しながら肺活量に関する複数の項目を調べます。条件を満たすとCOPDと診断される。この肺機能検査は長年タバコを吸っていて今もやめられない40~50代の人は、年1回程度のペースで受けたほうがいい。肺機能も25歳くらいをピークに、必ず経年的に低下していきます。
禁煙した後も油断は禁物、COPDは数十年を経て発症する
若いころは喫煙していたが、すでに禁煙した人の場合一度壊れた肺の組織は元には戻りません。禁煙後20年、30年経ってからCOPDだと判明することもあるから要注意です。COPDは、ある一定の喫煙量をベースに発症するといわれています。タバコをやめた人も、喫煙指数が200以上であれば、やはり年1回くらいのペースで肺機能検査を受けたほうがいい。喫煙指数とは、健康と喫煙の関係を示す指数で、ブリンクマン指数とも呼ばれる。1日のタバコ本数が20本×10年、あるいは10本×20年というように、喫煙指数が200を超えている人は要注意です。
ヘビースモーカーではない、1日数本の喫煙者でもCOPDになり得る
COPDになるのは喫煙経験者の2割程度で、タバコを吸った人全員がなるわけではない。ヘビースモーカーなのにCOPDにならない人もいれば、喫煙量は少ないのにCOPDになる人もいる。タバコへの感受性が高い人・低い人がいて、人によって体質が異なる。喫煙経験があり、咳、痰、息切れなどの症状が1つでもあれば、肺機能検査を受けた方が良い。自分が吸わなくても、身近な人が喫煙者であれば副流煙によって肺がダメージを受けている。それに、肺機能は年々低下し、タバコの感受性の高低は自分では分からない。機会があれば1度は肺機能検査を受けましょう。
加熱式タバコも電子タバコも、周囲への健康被害がある
加熱式タバコも電子タバコも煙は出ないので、一見すると周りの人には無害だと思うかもしれません。COPDを招くのは、従来の紙タバコばかりではない。禁煙対策の一環として切り替える人の多い次世代型のタバコ(加熱式タバコや電子タバコ)でも同じです。しかも喫煙者本人が加熱式タバコから吸入するエアロゾルには有害物質が含まれ、エアロゾル吸入後に吐き出した息(呼出煙という)は、周囲に拡散する。加熱式タバコの呼出煙に特殊なレーザー光を当てると、エアロゾルが大量に吐き出される様子が確認されています。
電子タバコは日本の法律ではタバコとして分類されないため、法的規制の対象外である点も問題となっています。2020年4月施行の改正健康増進法によって飲食店や職場などでは原則屋内禁煙となったが、電子タバコは規制されない。そうなると周囲の人には受動喫煙の恐れが生じてしまう。日本呼吸器学会も、加熱式タバコ・電子タバコのいずれも健康に悪影響を及ぼす可能性があると提言している。喫煙できるスペースが限られている今、外出先でタバコを吸いたいときは喫煙室に行くしかない。しかし、喫煙室は締め切った密な場所で、タバコを吸うためにはマスクを外さなければならない。もし新型コロナウイルスに感染した人がそこで喫煙していたら、喫煙室の中は感染リスクが跳ね上がってしまう。感染症を予防する観点からも、やはり喫煙はお勧めできません。
禁煙する際に大切なのは、いったん新型タバコに切り替えて段階的に進めるのではなく、すべてのタイプのタバコを断つことだ。禁煙外来の力も借りながら、主流煙も副流煙も吸い込まない生活で肺を守り、withコロナ時代を乗り越えていかなければなりません。早く禁煙するほど健康被害は最小限で抑えられるから、なかなか禁煙できない人は禁煙外来に受診してください。