2021/08/04
一酸化窒素(NO)を上手に取り込む体に…
血管をしなやかに動脈硬化を防止しましょう
空気中に存在する窒素と酸素が結合した「一酸化窒素(NO)」は燃焼ガスや排気ガスなどに含まれていて、変化したのちに高化学スモッグや大気汚染の原因となるため、みんなから嫌われている物質です。この「一酸化窒素」ですが、体内では重要な役割をもつ物質なのです。一酸化窒素(NO)は ,中枢神経系では気体拡散 によってシグナル伝達を行うガス状神経伝達物質であり、血管内皮細胞のNOは血管平滑筋に対し,最強の血管拡張物質なのです。人体は自動車など内燃機関と同様二酸化炭素(CO2)とともに一酸化窒素(NO)を呼気中に排気しており,その濃度 は大気の百倍に達するといわれています。さらに,この呼気中NOは気管支喘息で増加し,喫煙者で減少しています。呼気NOを測定することにより喘息の有無や吸入療法の必要性を客観的に知ることができます。呼気中NOは二酸化炭素(CO2)と異なり,少なくとも圧倒的に鼻副鼻腔が多く産生するといわれています。さらに慢性副鼻腔炎症例ではNOは減少し,アレルギー性鼻炎症例では不変です。呼気中のNO気道線毛運動機能に気道中NOは促進的に作用して喀痰の排出に関与しています。
このように体内で自然に生成される一酸化窒素は、排気ガスに含まれる人工的につくられた一酸化炭素とは違い身体の中で重要な役割を担っている健康を維持するための善玉物質なのです。
一酸化窒素には心臓から送り出された血液を各所に運ぶ重要な血管に柔軟性を持たせるという大切な役目があります。動脈硬化は、心臓から送り出される新鮮な血液を送る大事な血管が硬くなってしまうことです。血管を柔らかくする一酸化窒素は身体の中でつくられます。動脈は3層構造になっていて、血液が直接流れる内膜とそれを包む中膜と最も外側にある外膜で構成されています。真ん中にある中膜には平滑筋という筋肉の繊維があり、この平滑筋によって血管は血流の流れによって柔軟に伸縮するようになっています。ところがこの平滑筋が硬くなってしまい、柔軟に伸縮しないようになると、血液の流れが悪くなります。これが、いわゆる動脈硬化のはじまりです。一酸化窒素はこの平滑筋に作用して、筋肉の緊張をほぐし柔軟性のある血管をつくります。つまり一酸化窒素の生成が増えることで、柔らかい血管をつくることができます。この一酸化窒素を平滑筋に送るため生成の指令を出すのは最も内側にある内膜です。
血管が硬くなると血液の中にあるコレステロールなどの脂分が血管に吸着して血管を細くして血の流れを悪くしてしまいます。内膜から中膜の平滑筋にNOが作用しにくくなり血管がさらに固くなります。動脈硬化が進行すると、日本人に多い病気である「狭心症」や「心筋梗塞」などの病気や、「脳卒中」などの脳内の重大な血管の病気になります。
一酸化窒素は血流が多くなることに反応して、生成される一酸化窒素が増えます。血流が少なくなれば一酸化窒素の生成は減少します。血流を増やせば一酸化窒素の生成は増えて柔軟な血管を手に入れられるのです。こうならないように血流を増やして健康な血管を保つような努力が必要になります。
一酸化窒素の生成を促し、健康な血管を維持するには運動が一番です。毎日階段の上り下り 軽いジョギングや散歩、軽い腹筋を何度かして休む、という動作を繰り返すだけで良いのです。特におすすめしたいのは、第2の心臓と呼ばれる「ふくらはぎ」の筋肉をつかった運動です。つま先立ちして降ろすという簡単な繰り返しでも良い運動になります。もちろんウォーキングや軽いジョギングも、ふくらはぎの筋肉を使います。運動する際にも「ふくらはぎの筋肉」や「腹筋」を使うことを意識して、筋肉を使ったあとに力を抜くことを意識して行いましょう。
食事においても「アルギニン」を含む食材を採ることで一酸化窒素の生成を増やすことが可能です。アルギニンを多く含む食材は、魚、赤肉、鶏肉、大豆や豆類、ナッツなどが代表的です。また一酸化窒素は不安定な物質で、酸素と結合して二酸化窒素(NO2)に変化しようとします。そこで「抗酸化物質」を食事により摂取することで、一酸化窒素を保護することが可能です。抗酸化作用のある栄養素は、「ビタミンC」や「ビタミンE」、「ポリフェノール」などが代表的なものです。抗酸化作用のある栄養素の入った食材も同時に摂取することで、2倍の効果が期待できます。ただし運動に比べると効き目は少なめで持続性も短くなります。軽めの運動を小時間だけ継続することで、食事や薬剤およびサプリメントよりも大きな効果ができます。
丈夫な血管とは柔軟性のある血管で、その柔らかい血管をつくるのが「一酸化窒素」です。
加齢による血管の劣化は食生活の改善と毎日の運動で防ぐことができます。