2021/12/07
検診を受けがんの早期発見に努めましょう
現在、すべてのがん患者の情報は個人情報を保護しながら、国が管理しています。この「全国がん登録」では、がんの発見経緯も届けることになっています。
2018年の全国がん登録によると、この年にがん(上皮内がんを除く)と診断された日本人は約98万人でした。がんが見つかった経緯については、15%が、がん検診・健康診断・人間ドックによるものでした。しかし、住民がん検診をもっとも手がける日本対がん協会によると、コロナで、昨年のがん検診の受診者は3割も減っています。今年の上半期はやや回復しましたが、コロナ以前より17%も減ったままです。同協会とがん関連3学会は、全国486のがん治療施設を対象に胃、肺、大腸、乳房、子宮頸(けい)部の5つのがんを調査し、19年と20年を比較したところ、全国で約4万5000人に上るがん患者が減りました。つまりがんになっても発見されていない患者が2020年に全国で約4万5000人に上る可能性があると推定されます。
がんの発見経緯として、検診以上に大きなウエートを占めるのが、「他疾患の経過観察中」です。がん以外の持病などで医療機関を受診する際に偶然に発見されるケースを指し、がんの33%がこれによって発見されています。たとえば、せきが出るために撮ったレントゲンでたまたま早期の肺がんが見つかるパターンです。がん検診も病院での偶然の発見も減っている結果、今、がん患者が見かけ上、減っています。この反動はいずれ明らかになると思われます。早期がんで症状が出ることはまずありませんから、検診や人間ドックで体の変化を早く見つけるようにしたいものです。
ワクチンの重要性の再確認
新型コロナで国民の多くがワクチンの重要性を改めて認識するようになりました。幼児のころ沢山のワクチン接種の恩恵に改めて感謝したいものです。以下の接種率が低い3つのワクチンについて述べます。- HPVワクチン 近年、子宮頸がんが原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチン接種が行われていました。HPVワクチンは国内で13年4月に定期接種が始まりました。小学校6年~高校1年相当の女子が無料で打てます。しかし、接種後の痛みや運動障害などの報告が相次ぎ、2カ月後の6月に厚労省が勧奨中止になりました。そのため約8割に達する英国やオーストラリアなど海外と大きな差がついてしまいました。世界保健機関(WHO)は一貫して接種を推奨していて、日本の勧奨中止について「がんの危険に若い女性をさらしている」と批判しています。労働省は11月26日、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて、接種を積極的に勧奨するよう自治体に通知しました。未接種の方は是非接種することを薦めます。推奨の有無に関係なく定期接種は継続しています。
- ムンプスワクチン
おたふくかぜは耳下腺の腫れや痛み、発熱などが起きます。原因ウイルスの感染力は強く国内では数年に一度流行が起きています。軽症で済むことが多いのですが、10人から100人に1人の割合で頭痛や嘔吐(おうと)を伴う無菌性髄膜炎が起きます。さらに問題は400人から1000人に1人ほどが重度の難聴になることです。「おたふく難聴」と呼ばれ、治りません。日本耳鼻咽喉科学会の15~16年の全国調査では、おたふく難聴になった人は2年間で少なくとも約350人いたと警告しています。同ワクチンを定期接種としている国は100を超えます。日本は自己負担の任意接種ですが、定期接種にするか評価中です。しかし日本耳鼻咽喉科学会では積極的な接種を呼び掛けています。 - 帯状疱疹ワクチン
皮膚疾患の帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、中高年が疲労やストレスなどから発症しやすいウイルス原因疾患の一つです。英グラクソ・スミスクライン(GSK)日本法人は、テレビCMを放映し啓蒙しています。ご覧になった方も多いと思います。帯状疱疹は免疫低下で体内の水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化することで発症します。帯状疱疹後神経痛は薬でコントロールすることが難しく、長期に続く厄介な神経痛です。50歳代から発症率が上昇し、80歳までに約3人に1人が経験するとされています。GSKは帯状疱疹のワクチン「シングリックス」を全世界で発売されていましたが日本でも20年1月から発売するようになりました。これまでは水痘ワクチンで代替していましたがさらに予防効果が高く不活化ワクチンですので免疫不全の方など帯状疱疹を発症しやすく生ワクチンを打てない方にも打てるようになりました。しかし、価格が高いのがネックです。水痘ワクチンは一回で良いのですがシングリックスは2か月開けて2回接種が必要です。予防効果は90%以上あります。帯状疱疹を繰り返す方は是非接種をお勧めします。当院では1回19,000円(税込み)(要2回接種)で接種させていただいています。