2023/07/04
腸内細菌が脳に影響する? 「脳腸相関」とは
腸は、独自の神経系を持ち、常に脳と情報交換を行っているといいます。
これが「脳腸相関」。大人気で品薄が続く「ヤクルト1000」も脳腸相関を利用した商品です。
近年腸の健康状態や腸内細菌のバランスが、精神の状態や脳の病気にも影響することがわかってきました。認知症やパーキンソン病、うつ病などと腸内細菌の関係を示す研究結果もいくつか報告されています。
腸は脳と密接なつながりを持っています。脳と腸は迷走神経でつながっています。不安やストレスがかかる状態ではお腹が痛くなったり、お腹を下したりするのはよくあること。睡眠不足で胃腸の動きを悪くすることもあります。一方、腸は神経を介した情報伝達や、腸内細菌の代謝物、ホルモン、生理活性物質(サイトカイン)などによって、脳に情報を送り続けています。脳と腸がお互いに影響を与え合っているのです。腸にすむ40兆とも100兆ともいわれる数の腸内細菌は、私たち宿主の精神状態の安定や健康を支えているのです。
ストレスや睡眠改善に効くと人気の「ヤクルト1000」も乳酸菌シロタ株をとることで生じる腸内細菌叢の変化が脳に伝わり、ストレス軽減や睡眠の質改善につながると考えられています。他にも森永乳業が昨年発売したヨーグルトに配合されているMCC1274というビフィズス菌、アサヒ飲料の「届く強さの乳酸菌Wプレミアガセリ菌CP2305」などが開発されています。
認知症、パーキンソン病、うつや自閉症も腸次第?…脳の病気と腸内細菌の関係
認知症・・・腸以外の病気と腸内細菌の関連の研究の一つは、認知症患者とそうでない人にそれぞれ腸内細菌バランスに特徴があること、そこには食事が関係する可能性を示したことです。
認知症でない人は、認知症の人に比べ、味噌、魚介類、緑黄色野菜、海藻類、漬物、緑茶、牛肉・豚肉、コーヒーの摂取から分析した「日本食スコア」が高く、なかでも魚介類、キノコ、大豆・大豆製品、コーヒーを多く摂取していたという。
パーキンソン病・・・パーキンソン病とは、脳の神経細胞にある種のたんぱく質が異常凝集することによって引き起こされる神経変性疾患です。実は、パーキンソン病の発症は、脳由来と腸由来の2パターンあり、半数以上が腸由来なのではないかといわれています。その発症メカニズムは、腸内でできた異常凝集したたんぱく質が、腸管にある神経叢から迷走神経を通って脳に輸送されるというものです。
パーキンソン病患者の腸ではある種の菌が増えていること、この菌の増加により腸管透過性が高まり、腸管神経叢におけるたんぱく質の異常凝集につながる。今後、腸内環境の改善で進行を食い止めたり、発症そのものを防ぐことも可能になるかもしれません。
うつ病、自閉症・・・国立精神・神経医療研究センターが行った調査では、うつ病患者の腸にはそうでない人に比べるとビフィズス菌や乳酸菌が少ない人が多かったという。うつ病や自閉症患者の脳では神経に炎症が観察されることがあり、その炎症に腸内細菌が関与する可能性を示す報告も多い。
うつ病や自閉症には、脳内のセロトニンというホルモンの減少も関与するといわれている。セロトニンは、トリプトファンというバナナや鶏肉などに多く含まれるアミノ酸から、セロトニン前駆体を経て作られ、その後代謝されると体内時計に影響するメラトニンになる。ところが、最近になって、材料となるトリプトファンをたくさんとったからといって、必ずしもセロトニンが増えるとは限らないことが分かってきました。
セロトニンは腸でたくさん作られています。全身で作られるセロトニンの90%以上が腸で作られるともいわれます。腸で作られたセロトニンが腸の蠕動(ぜんどう)運動を促す刺激となっています。脳内のセロトニンは脳の覚醒状態を整えたり、精神的安定をもたらすほか、自律神経バランスの調整や痛みの調節などに使われる。
腸で作られたセロトニンは、血液に乗って全身をめぐり、体温の調整、痛み感覚の調整、血液凝固による止血作用や、血管の収縮などにも役立つ。ところが腸のセロトニンは脳に入る前に関門があり脳に到達しないといわれています。
今後腸のセロトニンがどの程度脳に作用するのか解明されていくことでしょう。第2の脳が腸、第2の心臓はふくらはぎです。腸と筋肉を鍛えることで健康寿命を延ばします。