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2024年11月

各人の病態にあった喘息治療を

日本喘息学会が発行する「喘息診療実践ガイドライン2024」に基づいて治療フローが示されています。症状に応じて画一的に吸入ステロイド薬(ICS)や長時間作用型β2刺激薬(LABA)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)などを増減・追加するというものです。しかし、患者ごとに喘息に影響する背景因子を見極め、最適な治療アプローチをすることが求められています。
近年、総患者数や死亡者数は減少しているものの、成人の有病率は上昇しています。最近は、大人になってから喘息を発症するケースが増えており、コロナ、インフルエンザやマイコプラズマ肺炎などの感染症への罹患をきっかけに発症する人も多い。コントロール不十分または不良な喘息患者では、まず頻度の高い鼻炎などのアレルギー性疾患の有無を確認し、さらに喫煙歴や胃食道逆流症(GERD)などを確認する必要があります。また、喘息患者は肥満、GERDや閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)などの併存が多いと言われています。

コントロール不良の要因

1.アドヒアランス(患者が処方薬をどのくらい指示された通りに使用)が不良

 患者が毎回吸入していると言っても、治療期間が長くなるにつれ患者独自の誤った方法で行っているケースもよくあります。また、高齢者ではデバイスを回転させる際などに力が足りなかったり、息を吸う力が弱く薬剤をうまく吸えなかったりする。そのため、定期的に正しい使用方法を患者に直接指導する必要があります。

2.アレルゲンの把握

患者の自覚がなくともアレルゲンに暴露されているケースもある。例えば、アレルゲンの確認では、ペットの飼育歴があるか。勤務後にいつも症状が悪化するといったエピソードがあれば、職場環境にアレルゲンがある可能性を考慮する。

3.喫煙

喫煙歴のある患者で喫煙を再開して喘息のコントロールがうまくいかないケースもある。また、受動喫煙については、本人は喫煙していないため医師に伝えていないケースがある。同居人に喫煙者がいないかも重要です。

4.他の疾患の併発

アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎による後鼻漏(鼻汁が咽頭に流れる)による痰の絡まった湿性咳嗽があればこの治療を並行して行うことで咳が改善します。副鼻腔炎には大まかに好酸球性副鼻腔炎と非好酸球性副鼻腔炎がある。近年、成人で発症する好酸球性副鼻腔炎が増えてきており、2015年に難病指定されています。難治性の副鼻腔炎で、鼻内の鼻茸(鼻腔ポリープ)や副鼻腔粘膜への顕著な好酸球浸潤などを特徴があります。この疾患にはステロイドが著効します。一方、蓄膿症としてなじみのある非好酸球性副鼻腔炎では、主に抗菌薬による治療を行います。
吸入治療しているにもかかわらず咳が出る方は吸入が正確に実施していないか、あるいはほかの疾患によるものか診断する必要があります。