2024/12/06
注射せずに鼻スプレー(インフルエンザ経鼻ワクチン)
2023年「フルミスト」というインフルエンザの経鼻ワクチンが認可されました。当院でも今年から接種しています。
国内では2歳から18歳までの方が接種対象者です。実質小児科向けのワクチンです。
今までの注射は「不活化ワクチン」といってインフルエンザの抗体を作ため必要な成分を取り出して作られています。
これを皮下注射し、体内で免疫を作るのが今までの注射でした。フルミストは生ワクチンです。
これは薬剤の中に弱毒化したインフルエンザウイルスがそのまま入っています。もちろんウイルスの毒性は弱められていて、体内に入ってもリスクは高くありません。
このウイルスを鼻に噴霧することでウイルスが鼻の粘膜で増殖します。
増殖したウイルスに対して体が免疫を作り出し、インフルエンザの重症化を予防します。
メリット
1. 長期予防効果…
生ワクチンはウイルスを直接接種するため予防効果が長時間持続することがメリットです。
不活化ワクチンの予防効果は5から6か月程度ですが、フルミストは予防効果が約1年持続するといわれています。
季節外れのインフルエンザ流行にも対処できると期待されています。
2. 1回で済む…
注射のワクチンは13歳未満は2回接種が原則ですがフルミストは1回でよいことがメリットです。
鼻からワクチンを接種するため感染への予防も期待できるのです。
人間の鼻粘膜にはIgAという抗体蛋白があり、粘膜から侵入する異物(ウイルスや細菌など)を防御する機能を持っています。
フルミストを接種するとこのIgAが誘導されインフルエンザウイルスを吸い込んでも体を守る防御機能に期待できるのです。
これは注射にはないメリットです。
また、フルミストのウイルスは鼻腔では増殖しますが肺に入ったら増殖しないように設計されており、肺炎にはなりませんので安心してください。
デメリット
生ワクチンのため免疫系の疾患やその治療を受けている方には打てません。
接種時の副反応も発熱や頭痛といった風邪症状が注射の人より長びく傾向がありますが、解熱剤で抑えることができます。
注射より費用が高い点も問題ですが、注射2回接種を考えれば同等か少し安くなるので2回接種の方はメリットが大きいかもしれません。
フルミストは完璧なワクチンではありません。
アメリカで20年以上使われていますがいまだに注射剤も選択肢になっています。どちらの製剤を使っても発症後の重症化を抑える効果があります。
風邪をひきにくい体づくり
年をとればとるほど免疫力は低下する。年齢以外にも免疫機能に関係する要因はたくさんあり、特に栄養とストレスの影響が大きい。
ビタミンA(ニンジンやカボチャ、レバーやウナギなど)ビタミンD(イワシやサケ、マイタケやキクラゲなどのキノコ)は免疫維持に大事と言われています。
特定の食材だけをたくさん食べるといった食べ方は免疫力が上がるどころかかえって低下してしまうリスクが大きいので注意が必要です。
免疫力を上げるには適度な運動が必要です。日頃体を動かす機会があまりない、という方は、まずは日常の身体活動(歩行量)を増やすこと。プラス1000歩、2000歩と増やすよう意識してみてください。
適度な運動は免疫機能を高める一方、過度に強度、頻度や継続時間を上げることによっては、運動そのものが原因となって感染症を引き起こしやすくなることが分かっています。
運動強度と免疫機能には密接な関係があります。忙しくてウォーキングをする時間がとれない、という人は、掃除などの家事をこまめにして活動量を高めることができます。
通勤や草むしりもけっこうな活動量になります。また、仕事で疲労をためたりストレスを受けたりすることによっても働きが低下してしまいます。